本当に中国に行けばいい暮らしができるのだろうか
最近日本の若者が中国に職を求めて海を渡るというドキュメント番組を見た。
月収で言えば日本円でよくて10万円程で日本の最低時給にも満たないような給料事情だが、暮らし自体は非常に良く、まるで高級ホテルのような高層マンションに住んでいる人もいる。
月収10万円でも現地の平均月収にくらべれば3倍で、日常で実感する生活の質としては日本より良いと語っている人がその番組では多かった。
「日本を捨てたのか日本に捨てられたのか」というフレーズが非常に印象的であり、日本に居場所が無かったり日本でカツカツの生活を続けるよりはよほど良い暮らしができるという印象は感じた。
果たして本当に中国に行けば日本よりいい暮らしができるのだろうか。
実態として夢物語でない部分もあり、ただコールセンター業務で日本人なら誰でもできる仕事をしに中国に行った場合「日本にいるよりはマシ」ぐらいの生活が上限である。
決して豪遊などができるわけではなく、中国ならではの問題もあり日本人が生活するうえでの快適さは総合的に見て絶対的に中国の方が良いともいえない部分もある。
それでも日本の若者の中国流出は止まらない。
転職説明会などでも中国方面への説明会はしばしば開かれていたり、ネットの求人でも「日本語だけで生活できます」という条件があるらしい。とくに中国の大連は日本語だけで生活し、仕事もできるほど日本企業が進出しておりコールセンター業務などは人件費の安さから現地で日本人を雇って行っているようである。
現地に渡った日本人「正直やりがいは感じない」
つまり、日本社会で上手くいかなかった人が中国に行った程度ではほどほどの努力で日本よりちょっといい程度の生活ができると言うだけの話でその「ぬるま湯」につかりスキルアップの向上をしない社員もいるようである。
中国人「こっちに来ている日本人は日本語ができるだけでスキルがなく、中国語を覚えようとしない」
はっきりこのように言っているわけではなかったが、そのような趣旨のことを言っており実際大連に渡った日本人社員も「せっかく中国に行くなら中国語を覚えようとして2年経ったけど案の定中国語を覚えなかった」と語っている。
結局のところ大連は日本語が使える場所が多いため、真剣に中国語を覚える機会もなく日本と同じような生活ができてしまう。ただ日本語ができるスタッフのいる日本式美容室や日本の書籍などは倍以上の値段でありそこに出費が消えてしまうというのも実態のようだ。
中国語を覚えようとしている日本人もその番組内には出てくるが、よほど意識を高く持っていなければ中国に行ったからと言って中国語を覚えることにもならず日本と同じような生活をしているという典型的なパターンになる人も多い。
逆に言えばそれだけ日本的な環境が充実しているともいえる。
日本の都会でギリギリのフリーター生活をして狭いワンルームに住むなら中国に行ったほうが生活の質自体は高くなりそうだし、意識を高く持てば中国語を覚えて更にキャリアアップができる可能性もある。
日本である程度貯金してからいけばしばらくの間はかなり良い生活ができそうだとも感じた。しかし中国で得られる給料だけでは日本に帰国して生活を始めるだけの費用が貯められないため、ノープランでいけば一方通行になって変えることができないという危険もある。
番組の冒頭で中国に渡った日本人が「環境を思い切って変えたかった、人生をリセットしたかった」と語っていたが海外に行くというのはそれだけ環境が変わるため人生を孵らえれた気分にはなる。
「漠然と海外に行けば人生が変わる」というのも、何も考えずに日本の底辺に定住する由はまだマシだが、その漠然とした思いだけでは結局海の向こうでも日本と変わらない生活をズルズルとしてしまい数年が過ぎる結果になる。
中国に行って働いてるから相当意識が高い人ばかりなのかと思いきや、その内実日本よりちょっと良い生活に慣れて、そこに定住して大きな野心もあまりないという人も多いという印象を受けた。
ただ、そこまで野心を持たずとも少しいい生活をするためにいいところに行くという軽い考え方でどんどん海外移住をしてもいい時代になってきているのではないかとも思う。
無理に日本で先行きの見えない生活をし続けるよりは、中国に行って日々の生活の質が少し上がればそれでいいという考え方もありかもしれない。ぬるま湯も決して悪い事ではなくちょうどいいぬるま湯があるならその環境を必要とする人もいる。全員が野心を持って人生を頑張る必要はなく、程よいぬるま湯が中国にあるならばそこを選ぶのもまた人生だろう。
日本の若者冷遇の構造は一度若者が海外に流出して深刻な事態にならなければ変わらないだろう。
日本に良い環境がないなら海外に移民する時代は既に訪れており、多くの若者が海外に現実的な職場を求めて旅立っている。もう今の若者が海外移住も選択肢の一つに入れなければならない程、日本の若者に対する環境は劣悪なものになっているのが現実だ。
海外に行けば夢物語だというわけではないが、日本に居続けることももう夢物語ではないのがこの国の実態でもある。