負け組ゆとりの語り場

社会に取り残された男が日々を語る

野球のWBCはサッカーのワールドカップを目指すべきではない

今年2017年に最も日本で盛り上がったイベントと言えば野球のWBC、ワールドベースボールクラシックだろう。

この大会は2017年で4度目を迎え結果としては野球の母国であるアメリカが優勝する形になった。

 

この大会を通じて、"サッカーファン"である自分が感じたことは「野球ファンはワールドカップに憧れている」という事であった。インターネットで野球ファンの意見などを見てもしきりにワールドカップとの比較が目立ちサッカーを意識する姿勢が目立った。

 

これまで野球のWBCといえば本当は権威がなくどの国も本気ではないマイナー大会であり日本だけが本気になっているという事を批判されてきた。特にサッカーファンはWBCを批判する傾向にあり、ダルビッシュ有のように野球界からの批判もあった。

いわば野球ファンはWBCに対してコンプレックスがあり、いつかサッカーのワールドカップのようになりたいと考えている傾向がある。

「日本が最初の二大会で優勝したのはサッカーのW杯初期にウルグアイが優勝したようなものであり、ここから大会を大きくしていけば良い」

そんな意見もネット上で目にしたことがある。

WBC

現実にWBCを見ている日本の野球ファンは野球日本代表、すなわち「侍JAPAN」にしか興味がなく、そもそも日本の野球ファンは野球という競技自体に興味がない。

例えばサッカーファンは日本代表が出場する試合以外でも観戦する傾向があり、FIFAワールドカップはどの試合も高視聴率を叩きだす。決勝の試合は日本代表が出場せず深夜や早朝にもかかわらず非常に多くの日本人が観戦する。

一方WBCの決勝は、世界大会にもかかわらずBS送りになり一部の野球ファンしか話題にしない。結局日本の野球ファンが好きなのは「ベースボール」という競技ではなく、そこに付随するエンターテイメントでしかない。

 

しかし野球とサッカーというものは全てにおいて質や特徴が違うであり、目的とするものが異なる。

サッカーファンとして率直な環境を述べるのであれば、野球はグローバル化しない方がいいだろう。なぜならば世界が野球に本気になれば日本はあっという間に勝てなくなるからだ。野球においてある程度日本が活躍できているのは、野球がマイナー競技であり世界のほとんどの国で行われていないからに過ぎない。

 

すなわち少数の国だけで野球は行われており、特に野球の代表戦に本気になる国は日本を含め数か国しかないため日本が勝ちやすい状況がある。

それにもかかわらずこの2大会日本は優勝できていない。

それが何を意味するかと言えば、世界が野球に本気を出せば日本は勝てなくなるという事である。

 

そもそも野球というフィジカルやパワーが前面に押し出されるスポーツは日本人に向いていない。日本人はテクニックやスタミナ、チームワークで勝負しなければならない人種であり、アメスポ的なフィジカルスポーツにそれほど適応しているとは言えない。

野球という世界において日本人が活躍できているのはあくまでマイナースポーツであるからであり、世界中が本気を出せばフィジカルの前に敗れ去るだろう。現にアメリカのメジャーリーグでは実は日本人はそれほど活躍しておらず野球ではマイナーとされているブラジルとそれほど変わらない実績でしかない。

 

日本人は野球というパワースポーツに向いていないが、世界の競技人口が少ないためこれまでは活躍できていた。

仮に野球がグローバル化し世界に普及すればこれまでの幻想は崩れ去り、日本人が野球に向いていないことが浮き彫りになるだろう。

 

やや厳しい意見かもしれないが日本の野球ファンはガラパゴス化された閉鎖的な、そして"幸せな世界観"の中にいたほうが良いだろう。現実を知れば知るほど野球に関しては絶望的な世界しか待っておらず、「知らない方が幸せなこともある」という結果にしかならないだろう。

仮に世界中が野球の本気になりWBCがFIFAワールドカップのようになれば、日本代表の侍JAPANはそもそも出場さえできないだろう。それほど世界との競争は厳しい物であり、ひた隠しにされてきた現実がそこにはある。

 

サッカーファンとしては世界との競争がどれほど厳しいか痛いほどわかっている。

よく野球ファンはサッカー日本代表の成績を嘲笑するが、それは競争が穏やかなスポーツから見た意見でしかない。アジアですらもはや競争が激化しているサッカーにおいて、日本代表はそう簡単に勝てない時代になっている。今やサッカーは世界中が本気になっているスポーツであり、アジアの国々も格段にレベルが上がっている。

 

まだサッカーはスタミナやテクニックという日本人の長所で打開できる可能性が無くはないが、野球が本当のグローバルスポーツになればその差がより顕著になるだろう。

現時点でもメジャーリーグで通用する野手はほとんど存在せず、日本人野球選手のパワー不足は指摘されている。

野球がマイナースポーツの段階であるにもかかわらず既に日本人のフィジカル不足が指摘されているのだから、ここに世界中の選手が参入するようになれば結果がどうなるかは想像がつくだろう。

 

野球はむしろ日本人だけが楽しんでいる時代の方がいいというのがサッカーファンから見た意見である。

野茂英雄がメジャーリーグに挑戦して日本野球の国際化が進んだが、実際には戦後昭和の野球のように「王長嶋」がON砲を駆使し、巨人が連覇をし国民的な話題となっていた時代の方が当時の人々としては楽しかったのではないだろうか。

自分は無理な国際化を目指すよりも、日本人だけが楽しむガラパゴス環境の方が良いのではないかと最近考えている。

むやみに世界との競争を知るよりも、日本人が日本的な世界観の中だけで生活している時代の方が活気があり盛り上がっていたのではないか、そしてそれが国際競争力の要因になっていたのではないか思わずにはいられない。

 

今サッカーは世界的な普及や隆盛の時代を迎えつつある。

FIFAやサッカー界の発信力に対して野球界というのは真正面から立ち向かう事はできないだろう。FIFAワールドカップで盛り上がることや世界的スポーツであることはサッカーの強みであるが、その方面で野球が立ち向かえば勝ち目はない。

野球がより大事にすることはドメスティックでローカルな話題なのではないだろうか。

 

WBCや野球が世界に普及するスピード以上に、FIFAワールドカップやサッカーは拡大している。そしてベースボールの拡大や普及は必ずしも日本の野球ファンに幸福をもたらすとは限らない。元々違う類のスポーツであり、お互いを参考にしてもそれほど多くのヒントは無い。

 

例えばサッカーのJリーグは現実には観客動員数がそれほど多くなくメディアでも取り上げられていない。しかし日本サッカーの優先事項はJリーグをプロ野球のようにすることではなく、国内リーグが全てではない。

一方で野球もまた侍JAPANが最優先事項ではなく、WBCの優勝が全てではない。

野球もサッカーも目指すべきものが違う。

これからはグローバルな競争が見たい人はサッカーを観戦し、ドメスティックな盛り上がりを求めたい人は野球を観戦するという時代になっていくのではないだろうか。

サッカーがドメスティックを求めてはいけないのと同時に、野球もグローバルを求めてはいけない、目指すべきものを見誤らない事が双方に求められているのかもしれない。

そして双方のスポーツがこの日本を大きく盛り上げることを期待したい。

elkind.hatenablog.com