負け組ゆとりの語り場

社会に取り残された男が日々を語る

最近の日本人「結局日本で十分だよな、安全だしコスパいい」

一昔前に比べて留学生が減ったり、海外旅行をする人も減ってきて確実に日本人の海外離れが進んでいる。不思議なことにインターネットが普及し海外の情報を手に入れやすくなった現代のほうが海外志向の人が減っている傾向にある。

勿論経済的な余裕がなくなったという事もあるのだが、金銭的な余裕と憧れにそこまで因果関係があるかは疑問である。むしろ日本人が貧しかった時代の方が漠然と海外に憧れがあったように思う。

 

留学の議論に関して「外国で学ぶ必要がなく十分に日本で学べる」という人が多いし、旅行に関しても「わざわざ危ない目に合って高い金を払って旅行するより日本の方が充実している」という人が多い。

 

正直なところ、日本って全然良い国で彼らの意見は的を射ているのである。

最近の日本再評価論、日本凄いですねブーム、海外の反応ブームで今まで日本人が気付かなかった日本の良さを知る機会が増えている。日本人が日本の良さに気付きだして「海外って神格化して憧れるほどでもない」という事に皆気付き始めて、今日本再評価論のブームがやってきている。

 

留学に関しても漠然と留学するよりは日本で生きていくならば日本のいい大学を出るだけで十分だし、旅行も国内旅行ってものすごくコスパいいのも事実。

海外旅行で日本旅行程充実してる国はなかなかないし、余計なトラブルも起こりにくい。

そこを「トラブルを楽しむ」「未知のことを楽しむ」という人はどんどん減ってきて、費用対効果で充実しているかどうかを選ぶ事に重きを置く人も増えたし、現実に日本のサービスってものすごくレベルが高い。日本だけで生きていく人生も悪くないし、一度も日本から出なくてもそれなりに、いや結構幸せなのである。

 

これって悪い事じゃなくて日本って卑下するほどのものではなく実はいい国ですよね、っていう話になる一方で少しさびしくもあるとは思う。

日本人の価値観が手っ取り早く、現実的に手に入れられる範囲内でそれなりにリターンの確率が高いものを求めていているともいえる。

例えば海外に行ってとんでもなく酷いサービスがでてきたときに、「これも海外だ」っていうサプライズを楽しむことがなくなってきてて、「安定板高品質なサービスを当たり前に受けることが最適解」みたいになってきている現実がある。

海外に行ってとてつもなく酷い目に合うこともあるけど、その一方でものすごく良い物を見つけるというジェットコースターのような旅行ではなく、それなりに安定した穏やかなメリーゴーランドのような体験を今の日本人は求めている。

 

だからネットの旅行記やSNSの報告などでもどれもこれもありふれてて、完全に身内向けになってる現実もある。その身内向けがこれだけ充実してる日本社会って恵まれてるし、内需や国内文化がこれだけ発展して充実してる国は実は珍しい。

それゆえにどれもありふれたものになっていて、横並びの文化にもなっている。

散々言われてきたように突出したものが現れず、平均的に充実していてその平均だけで見れば世界屈指でありトップクラスだ。

ジェットコースターもいいけど、メリーゴーランドも結構いいじゃんって人がいてもいい。

 

そこをどう取るかの問題で、挑戦しなくてもリスクをとらなくても十分な水準のものが楽しめることを良い事ととらえることもできるし、そこから突出した異分子も現れにくいというデメリットもある。

またこういった面を評価して日本再評価論が活性化することで、日本の闇や問題点から目を背けているという現実もある。

実際日本が発展して景気が良かったころの方が日本を卑下して、海外を持てはやしていたし、逆に日本が国際的に影響力を失いアジア諸国にも追いつかれたり追い抜かれたりしてる今日本再評価論で言い聞かせようとしている部分もある。

 

明治の時も海外コンプレックスで欧米に対抗しようとして発展していたし、第二次世界大戦の頃は自信持ちすぎて日本を過大評価して失敗した。実は日本人ってコンプレックスもって自分たちが自信ない時の方が上手くいくし、自信持ってる時の方が失敗する。

ワールドカップの時も前評判低いときの方が成績がいいし、今回はベスト8行けるみたいな雰囲気の時は見事に瓦解する。

自分も昔は日本が好きで「日本人は自身持つべき」みたいなことに賛同していたけども、最近では日本再評価論は長期的に見てマイナスになるのではないかとも思い始めている。

日本の問題点を覆い隠して、内向きになって「なんだかんだでいい国だ」と満足することがはたして本当に将来の日本のためになるのかという疑問はある。

 

「安定してそれなりに良い物」「コスパが良い物」を求めるのも、失敗したくない事や失敗を許せない事の裏返しのような気がするし、ハイリスクハイリターンなことよりも安定性を重視することに先行きはあるのかという疑問もある。

ただ日本で最も安定して発展した時代って実は江戸時代でもある。鎖国をして大きな政変もおこらずわりと安定して長期政権が維持された時代があった。

そしてその頃の町民文化や学問は世界的に見て実は高水準だった。

内需が充実して経済が回り、ほとんど一国で完結することってコンパクト主義、小日本主義の極致でもある。

むしろ今後道州制で更にコンパクトにしていってローカル地域を充実させる方向がもしかしたら正解かもしれないし無駄に海外志向が高いことも正解とは言えない部分もある。

海外志向がいい事なのか、それとも日本再評価論がいい事なのか、そしてこういった議論が出始めていること自体江戸末期に似ている状況にも見える。

 

確かに日本が充実して素晴らしい国であることも事実だがその一方で限界もある。江戸幕府の時代は確かに高水準だったがあのまま続けていたらどうなっていただろうか。

現実に日本だけで考えて、日本で一生生活していくことの生活モデルは崩壊しつつある。終身雇用制度や日本だけで人生を終える事が成り立っていた時代がそろそろ終わろうともしている。

 

「日本で十分」という人は江戸末期の鎖国維持派や尊王攘夷派で、今の時代に真剣に危機感を感じて外に出ていかなければならないと考えている人は討幕派なのかもしれない。本当に日本を再評価するべきだったのは10年前までであり、今再評価するのは現実から目を背けることにもなりかねない。いよいよ幕末がやってきた、幕藩体制の限界が近づいてきたともいえる。

日本は外圧でしか変わらないというが、果たして今の日本は本当に変わらなければならないのだろうか。

かつて幕末の志士たちが幕藩体制の限界を感じたように、今の自分には超少子高齢化社会を迎える既得権益層が支配する現代日本の限界を感じずにはいられない。

elkind.hatenablog.com

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