負け組ゆとりの語り場

社会に取り残された男が日々を語る

ワイ、ネイマールの現在に悲しくなる・・・・

サッカー界で最も「小者」という言葉が似合う選手といえば、有名どころではブラジル代表のネイマールだ。

ある意味でサッカーの醜さや汚さ、姑息さを凝縮したような選手であり、スポーツマンシップに欠ける行為で悪名高い。

 

ブラジル代表といえばサッカー王国を長年牽引してきた歴史があり、往年の有名選手を上げれば枚挙にいとまがない。

セレソンにおける代表での得点数を考えれば決して小者という言葉が相応しい選手ではないどころかむしろ上位であり、年齢を考えればなおさらその価値は評価されるべき選手ではある。

よくロナウジーニョと比較されるが、得点力やシュートセンスに関しては間違いなくネイマールの方が上で、フィジカルやファンタジー性ではロナウジーニョが勝る。またロナウジーニョの場合ワールドカップとバロンドールを獲得したことに加えて、いわゆる"舐めプ"でも許されるどころかライバルチームのサポーターに拍手を送られるほど圧倒的な存在だった。

それがロナウジーニョだからと許されるのに対して、ネイマールはヒールリフト、ポルトガル語ではソンブレロをするだけでバッシングを浴びるほどそのプレースタイルが問題視されている。

 

ネイマールの場合、勝負が決まっている時に舐めプ気味にトリックプレーをすることに立敷いてロナウジーニョはそれを真剣勝負の舞台で実戦の領域に高めていたという違いはあるのかもしれない。

 

ネイマール

更にネイマールの評判を落としているのがいわゆるシミュレーション行為であり、ファウルをもらうためにわざと演技をすることが、今回のロシアワールドカップでも大々的に取り上げられた。

特にビデオ判定が導入されたことにより、演技が明らかに判定される様なったことはネイマールに追い打ちをかけた。今後サッカーの試合においてビデオ判定は更に普及する可能性が高いので、ネイマールのやり方は今後通用しなくなっていくものだと思われる。

 

今でも一応はメッシ、クリスティアーノ・ロナウドに次ぐ第三の名手としてネイマールは選出される傾向にあるが、ロシアW杯でブレイクしたフランス代表のエムバペのような下の世代が台頭して来たり、エデン・アザールやモハメド・サラーのような似たプレースタイルの選手も覚醒したりしてきており必ずしもその地位は安泰ではない。

 

このまま典型的なブラジル人選手にありがちな早熟型で終わるのか、それともここから復活を遂げるのか。個人的にはネイマールの汚いプレーや、大人になりきれないところに人間味を感じて今でも応援しているし、そのプレースタイルはとても気に入っている。

サントス時代にブラジルの新星だと言われていた時期に、ちょうど自分も新生活を始める時期だったことで自分の人生と重ね合わせていたこともあるし、バルセロナに鳴り物入りで加入してからの過程を見てきたからこそ思い入れもある。

ネイマールに関しては他人事ではいられないというか、憧れもしているし嫌いになれないというか憎めない選手だ。自分自身、そうして賛否両論や好き嫌いが分かれて、物議を醸す選手や嫌われ者的な選手を逆張りで好きになりがちなので、ネイマールにはもう一度栄光を手にしてほしいという思いはある。

 

ただ現実問題として、2013年のコンフェデレーションズカップ優勝が彼のキャリアの中で絶頂期だったというサッカー人生になる可能性も否定できない。

コンフェデレーションズカップなど実際には、ワールドカップ前の予行演習に過ぎず既に廃止が決まっている大会だ。日本代表も参加したあの大会でブラジル代表は当時のディフェンディングチャンピオンであったスペイン代表を破り圧倒的な優勝候補として地元開催のブラジルワールドカップに臨んだ。

 

その結果がコロンビア代表との死闘でスニガのラフプレーによって負傷し、欠場したドイツ戦では1-7という歴史的敗退を喫し別の意味で歴史に残る大会となってしまった。

そしてロシアW杯では同じく優勝候補と目されていたものの、後に「ネイマールチャレンジ」として揶揄される醜態を晒しながらベルギー代表に敗れ去った。

 

正直なところサッカー選手のピークを考えると、この二大会のどちらかで優勝を手にしておかなければならなかった。

次回の2022年カタール大会はもちろんまだ可能性がある大会であり、20代で挑める最後のワールドカップなので是が非でもここで獲っておきたいというのがネイマールの立場だ。

 

しかし現代サッカーではもはやナショナルチームもクラブと同じような洗練された組織の時代になっており、更にシミュレーション行為が厳しく取られるようになっているので南米勢には向かい風が吹いている。

2002年の日韓共催W杯でブラジル代表は優勝しているので、ちょうど20年ぶりの戴冠ということになればきりが良いが、当時のブラジルとは状況が違う。

ブラジル代表といえば実質的に世界選抜であり、どのポジションの選手も名前が知られていた時代ではなくなっている。

確かにスターがいないと言われながらも何だかんだで選手は湧き上がってくるのがブラジルであるし、実際コウチーニョやジェズズといった選手はネイマール以外にも存在する。

ただ「ネイマールがセレソンの10番」と言われると、もう現時点では頼りなく感じるし優勝するイメージが沸かない。

そもそもリオネル・メッシですら個人の力ではアルゼンチン代表を優勝に導けず、マラドーナの領域に辿り着けないと言われる時代だ。

 

南米の選手がエースとしてチームを率いてワールドカップで優勝するという光景自体がもう過去のものになってきているし、両者ともにそもそも南米限定のコパ・アメリカですら優勝できていない。

かろうじてネイマールはリオ五輪で優勝してブラジル史上初の金メダルを獲得したし、メッシも北京五輪では優勝を果たしている。しかしサッカーの世界でオリンピックの覇者というのはそれほど大きな意味を持たないのも事実だ。

 

クラブレベルでいえばメッシは間違いなくレジェンドであり、バルセロナで獲得したタイトルは数えきれない。その一方でネイマールは代表だけでなく、クラブでも物足りないキャリアになってしまうのではないか。

 

確かにネイマールはバルセロナ時代リーグ優勝も果たしているしUEFAチャンピオンズリーグを制覇しているが、これはMSNトリオとして一時代を築いたメッシやルイス・スアレスあっての物で彼自身の力で率いて獲ったという印象は無い。

だからこそパリ・サンジェルマンに移籍して、フランスで正真正銘のエースとして新しい時代を切り開こうとしたはずだったのだが、ここでも評価はいまいち上がらない。ネイマールがフランスでやったことといえばヒールリフトを得意げに疲労してバッシングされたぐらいで、所詮は準トップリーグの中の強豪で王様をしているという評価に過ぎない。

ヨーロッパの舞台でPSGを王者に導けば評価は上がるかもしれないが、そのミッションも現実的には難しいどころか、レアル・マドリード移籍のための腰掛でしかないような印象さえ受ける。

 

ネイマールの前にPSGのアイコンであったズラタン・イブラヒモビッチにはまだ王者として人を引き付けるカリスマ性があり、パリ市民にも愛されていた。このブラジルのファンタジスタはこの点で欠けており、歴史を作る存在だとは思われなくなりつつある。

 

ブラジルの新星として登場したときはメッシ、ロナウドの次の時代をリードし、セレソンを復活させる才能だと思われていた。終わってみれば代表でもクラブチームでも大した実績が無く、よくいるブラジル代表の中の名選手の一人という評価となっているかもしれない。

他国なら間違いなくレジェンドではあるかもしれないが、それだけブラジル代表はサッカー界において特別な存在でもある。そう簡単に偉大な歴史に名を刻む存在にはなれないし、それだけブラジルサッカーの歴史は重い。

現実的には次のカタールワールドカップが全盛期で迎えられる最後のチャンスだろうか。その人間の真価は、その国や組織の時代が終わりゆく時に復権させられるかどうかで問われる。サッカーという競技自体、厳しい時に戦えるかどうかで名手であるかそうでないかが分かれる。果たしてネイマールはどちらの選手になるであろうか。