負け組ゆとりの語り場

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サッカーロシア代表が弱い理由が闇深い

スポーツ大国ロシアは2018年の夏に自国開催のワールドカップを控えている。

サッカーの大きな国際大会を開くことはロシアにとって悲願であり、ソ連時代を含めても過去最大級の国際イベントだと言える。

 

サッカーとロシアと言われてそれほどイメージが沸かない人も多いかもしれないが、実はロシアもヨーロッパの国々と同様にサッカーが人気なスポーツでありソ連時代からも民間で広く親しまれてきた。

欧州に近い西側になればなるほどサッカーの人気が高まり、シベリア地域の東部に近づくほどアイスホッケーの人気が高まるという構図がある。そのため今回のロシアワールドカップは全ての試合が西部地域で行われ、観戦の場合はヨーロッパに近い時差となる。

 

そしてワールドカップを自国開催に控え、開催国枠で出場するロシア代表は今非常に厳重な臨戦態勢となっている。

ロシアと言えば今年の1月に開催されたピョンチャンオリンピックで国ごと出場資格がはく奪されたことが記憶に新しい。その前のリオデジャネイロオリンピックでもいわゆるドーピング問題が騒動となった。

 

ロシアのスポーツに対するイメージはもはや地に落ちており、汚れた闇の深い世界だというものになっている。

だからこそ自国開催という重要な機会にロシアサッカー協会は敏感になっており、ドーピング問題への対策を徹底的に行い、威信を傷つけないように準備しているようだ。

 

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しかし別の見方をすれば、サッカーロシア代表がいまいち振るわない理由がまさにこれなのではないかとも考えられる。

はっきり言ってしまえば要するにドーピングをしていないから弱いのだ。

 

決してロシア代表は絶望的に弱いわけではなく、直近のブラジルワールドカップでは、勝ち抜けるだけでも非常に厳しいヨーロッパ予選を突破し参加をしている。

ブラジルではグループリーグ敗退に終わっているものの、欧州の中堅国程度の実力は兼ね備えている。

もっとも輝かしい実績はアルシャヴィンが活躍し、ベスト4に進出したユーロ2008だ。

まさに2008年から2014年までのロシアサッカーはこれからの発展を予感させるような新興国であることを感じさせた。

 

だがその成長が停滞し始める時がやって来る。

2014年に行われたソチオリンピック期間中に、当時はウクライナ領だったクリミアを併合したことで経済制裁を科せられロシア経済は低迷し始める。

そのロシア経済とリンクするかのように、サッカーでもロシアは本来は発展するはずだったルートから外れていくことになる。

 

自分は今回のワールドカップがロシアで開催されると決まった時、2018年は経済成長を遂げたロシアで華やかな大会が行われるだろうと期待していた。

かつて「BRICs」という言葉があったように、本来ロシアは次世代の新興国として期待されていたが、現実にはロシア経済は低迷し訪れるはずの未来はやってこなかった。

サッカーも同じで、ある時期にはロシアリーグのクラブが欧州の大会で台頭し、有名選手の移籍も相次いでいた。

クラブでも代表でもロシアは新たな強豪国になっていくのではないか、そう自分は予想していた。

 

ロシア代表

しかし現在ロシアのチームは以前ほど有名選手を獲得するわけでもなく、代表の成績も伸び悩んでいる。

ロシアサッカーがもっとも輝かしかった時期には、日本代表の本田圭佑がCSKAモスクワに所属しスペインの強豪セビージャに打ち勝ちチャンピオンズリーグでベスト8に進んでいる。これは今では考えられないような成績だ。

その他にもルビン・カザンやゼニト・サンクトペテルブルクなどのチームが、チャンピオンズリーグの舞台で旋風を巻き起こすことは多かったが今ではほとんど名前を聞かなくなっている。

むしろ有名選手の移籍はアメリカに移っており、米ソの宇宙開発競争のように、サッカーにおける冷戦も現在はアメリカにリードされている。

 

話をドーピング問題に戻すならば、そもそもサッカーの世界ではあまりドーピングの話を聞かない。

これがなぜなのかと言えば、サッカーの世界は流動性があるため秘密裏に国策でドーピングを行うということが難しい構造があるからだ。

前述のように外国からロシアリーグに移籍する選手も多いため、ドーピングを国策でしていればすぐに明るみになってしまう。更にロシアから他の国のリーグに移籍することもあるため、例えば西欧地域のリーグでドーピングを継続することは困難だ。

冷戦真っただ中のソ連時代や、今よりも選手の海外移籍が難しかったボスマン判決以前は閉鎖的な環境で行うことができたもしれないが今は21世紀だ。

 

またサッカーというスポーツの特性上、ドーピングを行い筋力や身体能力を強化したからといってそれが簡単に結果につながるという物でもない。

ボールを足で蹴るというのがサッカーであるため、不確実性が高く単純な身体能力の強化は役に立たない。

 

つまり「おそろしあ式スポーツトレーニング」がサッカーではまるで通用しないのだ。

ロシアはソ連時代からスポーツ大国として名を馳せていたが、実際にはただドーピングをしていただけというのが明らかになり、その張りぼての実態が白昼に晒されることになった。

 

ブラジルはサンバのリズム感覚をサッカーに応用し、ドイツは基礎から地道に育成改革を行い、フランスは移民選手に門戸を開きチームを強化した。

一方ロシアは薬を盛ろうとした。

そんなロシアンジョークが笑い話ではないのがロシアの闇だ。

 

今回のロシアワールドカップにおいて、ロシアは開催国枠として初戦を行う。

対戦相手はサウジアラビアであり、その後エジプト、ウルグアイとグループリーグ突破をかけて競い合うことになる。

一昔前の情勢ならばこのグループの突破は順当に考えればウルグアイとロシアだったが、今のエジプトはモハメド・サラーという選手が台頭しており今大会サプライズを巻き起こす可能性があるチームなので容易な競合相手ではない。

一方でロシアはいわゆる「海外組」がほとんどおらず、名の知れた選手がほとんど存在しない。

ゴールキーパーのアキンフェエフと、ミッドフィルダーのジャゴエフは本田圭佑とチームメイトだったこともあり日本でも有名だ。

スペインリーグのビジャレアルに所属するチェリシェフは、レアル・マドリードの選手でもあったため一定の知名度はある。

しかし本田圭佑のCSKAモスクワ時代を知っているファンからすれば、ジャゴエフはロシアの未来を背負う選手にまでは成長しなかったというのが正直な本音だろう。

 

サッカーの代表チームは自国リーグでプレーしている選手が主体となった場合良い成績を残すことも多く、今回のロシア代表が全く期待できないというわけではない。

ロシアにおけるサッカーの発展は今回のワールドカップの成績次第だ。

自国開催でロシア代表が勝ち進み大会が盛り上がれば、止まってしまった成長を再開させることができるかもしれない。

 

しかしそもそも、ロシア人の感覚からすると「サッカーで強かったら何になるんだ、大事なのは軍事だ」というのが本音かもしれない。

現在のFIFAランキングでロシア代表は60位代であり、これは中国代表とほとんど変わらない。現段階で63位がロシアで65位が中国というのは、かつてのロシア代表の姿からは想像もできない。

今回のW杯も開催国枠でなければ厳しい予選を突破できていなかった可能性の方が高い。

 

その一方で軍事力ランキングでは世界2位の"強豪"である。

サッカーでは惨敗するかもしれないがスペインやポルトガルなどミサイルボタン一つで叩き潰せるだろうし、ウクライナやポーランドもまた子分の衛星国にしてやろうかと彼らは考えることができる。

ドイツやフランスもやるならサッカーではなく力でかかってこいというのがロシアの思考法だ。

ウラジーミル・プーチンは日に日に強硬路線を強化しており、経済やスポーツよりも軍事力の威信を重視している。

サッカーでは低迷しているがむしろ軍事では戦闘機や戦車、新型ミサイルと世界基準の"選手"が育っている。軍事ではサッカーにおけるブラジルのような強豪国であり、ロシア人にとってはそれが何よりも重要な事なのである。

 

それでも今回のロシアワールドカップが世界に対するロシアのスポーツを発信する絶好の機会であることに変わりはない。

サッカーはロシアのスポーツの中ではクリーンな部類である。国家ぐるみのドーピングが発覚したことをきっかけにロシアのスポーツは変革を余儀なくされている。

今回のワールドカップをきっかけにこの国のスポーツ文化が現代化していくことを願いながら、この大会の行く末を見守りたい。

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