負け組ゆとりの語り場

社会に取り残された男が日々を語る

実はロシア人はお酒を楽しい物だとは思っていない

ロシア人といえばお酒、特にウォッカが好き、日本人にはそんなイメージがある。

酒飲みにとってはロシアは同じ仲間として憧れの国でさえある、ロシア人のように酒を人生であると胸を張って誇りたいという謎の憧れだ。

 

しかしそのロシアではあまりお酒という物は好意的な物とは見られておらず、堂々とお酒が好きだということ自体タブー視されている。

「お酒大好きです」

そんなことを言うロシア人はそれほど多くないとロシア人の動画投稿者が語っていたのを見たことがある。

日本ではお酒が好きなことは時として同じ酒飲み仲間からは良い趣味だと思われたりコミュニケーションが弾んだりする楽しい物だというイメージがあり居酒屋も非常に多い。

 

その一方ではアルコール大国として知られるロシアは厳格に酒類に対して厳しく、お酒に寛容なのは実はアジアなのである。

ロシアでは夜間での酒類の販売は禁止されており、テレビでも酒類のCMは禁止している。

前述のロシア人ユーチューバー曰く「女性が楽しそうにお酒を飲むCMは違和感しかない」らしい。

本場のロシアや東欧ではお酒が本当に深刻な問題になっており、政府が真剣に対策に乗り出すほど重大な社会問題と化している。

アジアの人々はまだお酒を飲んでも秩序を維持できている方であり「お酒は楽しいもの、かっこいいもの」と言っていられるのもまだ余裕がある証だ。

しかしロシアではそんなことを大っぴらに言えないほど深刻な問題が存在している。

 

日本でお酒を飲まなければ「ノリの悪いかっこ悪い人」という扱いをされむしろお酒の強さを自慢し合う傾向にあるが、実は本当にお酒に強くアルコール依存症の人々が多いロシアではそういった発言はタブー視されている。ロシア人といえばお酒が好きだ楽しげに語ったり、そういったイメージで見ることは喜ばしくない人々も実は多い。

 

例えば日本で「俺はタバコに強い」「私はタバコ大好き」といえば少し引かれるだろう。いわばロシアではお酒はタバコ並にシリアスな問題とされており女性がお酒好きなどといえば、それは日本で「私タバコ大好きなの」と口にする事ぐらいドン引きされる。

日本はまだ女性がお酒が好きだとカジュアルに語れるレベルにあるという事でもある。

 

ブラジルにもサッカーが嫌いな人がいるように、ロシアにもお酒が嫌いな人がいる。

お酒を飲む人は陽気で楽しい人、そう思っていられる国はまだ幸せなのかもしれない。ロシアのようにアルコールに強く、重度の依存症患者がいる国では家庭内暴力に発展することも稀ではない。

ウクライナのお婆ちゃんが「若いころには夫にお酒を飲むためにお金を取られたけど、もうその人はいないから幸せ」と語る姿を見たことがあるが、お酒に絡む問題は日本とは桁違いに多いのが東欧やロシアだ。

 

南米のサッカーでは日本では考えられないような暴動や騒動が起きるが、それだけサッカーが根付いているから起きる事でもある。ロシアや東欧におけるお酒の問題もこの構造と似ていて、日本では考えられないほどにお酒やサッカーが単なる楽しみや娯楽の上限を超えてしまっている国も存在する。

 

またロシアでは近年、若者のウォッカ離れが進んでおり欧州産のワインが普及し始めているようである。

「命の水」とも表現されるロシアの魂ウォッカも時代と共に役割が変わっていくのだろう。ロシアという国は必ずしも幸福な時代ばかりではなく、長い苦難を味わってきた国でもある。そういう苦しい時代における心の拠り所としてお酒を飲むという行為が発展してきた背景がある。

ビールは本当にジュース感覚、ウォッカを梅酒という"シロップ"で割る、自家製酒は合法、時として酒用に製造されていない工業製品もアルコール摂取のために使うのがロシアだ。

 

有名なベレンコ中尉のMIG25亡命事件を扱ったドキュメントにおいても当時の腐敗したソ連の様子が描かれており、機械を清掃するためのアルコールを横流ししそれを軍人が飲んでいる有様だったと伝えられている。

第二次世界大戦中にも食用品のじゃがいもを勝手に蒸留してお酒に変えたり、これまた戦車の整備に使うアルコールを飲料用に使用したりというような仰天エピソードも多い。

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正直に言えばロシアは娯楽があまり多い国ではないだろう。

日本も戦後直後は「カストリ酒」という密造酒が流行ったほど荒んでいたが、時代が発展するにつれて最近ではお酒が飲めない人も増えている。多くに国で娯楽が多様化したり裕福になれば酒への依存度は低くなる傾向にある。

 

しかしロシアでは暴力、酒、そういった即自的な物が日々の娯楽に直結している。

個人的にはお酒がなによりもの娯楽だという感覚は理解できる。世の中の楽しみは誰の手にも入るものではなく、お酒しか楽しみが無いというのは自分のような負け組の人間には理解しやすい。

楽しいことが少ないがゆえにお酒が唯一の楽しみになるという現象が国単位で起きてしまい、それが重大な社会問題にまで発展しているのがロシアだ。

 

そういった家庭内暴力などを目の当たりにしているロシア人女性やスラブ文化圏の女性は結婚相手に「お酒を飲まない人」という条件を上げることが多い。例えば一昔前に美人過ぎるバレー選手として話題になったサビーナ・アルシンベコバも理想の男性の条件にお酒を飲まないことを上げていた。

こういうところにロシアやソ連圏の闇の深さが現れているのだろう。

 

これは日本で「タバコを吸わない人」という条件を結婚相手に求める女性が多い事と似ている。例えば日本のアイドルや女優に対する恋人の条件という質問では結構そういった答えを上げる人は多いが、「お酒を飲まない人」と答える人はほとんど見かけたことがない。

 

しかしロシアではそういう女性が日本よりも圧倒的に多く、お酒についてロシア人と話すときは典型的なイメージで語る事は避けたほうが良いとされている。

本人は楽しいが周りは迷惑であり体には有害、ロシアにおいてのお酒は日本におけるタバコのような存在として扱われているということを踏まえる必要があるだろう。

お酒を日本人の何倍も飲む文化がある、それゆえに同時にお酒に起因する問題も倍増するというのがロシアにおけるお酒事情なのである。