酒を飲まない人は本当につまらない人なのか?
よく酒を飲むか飲まないかの議論で「酒を飲まない人はつまらない暗い人」みたいなレッテル張りがされることがある。
普通に生活してたら付き合いで酒を飲むことぐらいあるだろうとか、そこまで楽しみを求めない人なんだろうなとかマイナスのイメージで語られることが多い。
結局多くの人が自分の生活を肯定したがり、自分より楽しくなさそうな人を見つけて満足したいのである。
自分自身は大のお酒好きではあるけれども、かといって飲めない人がつまらない人だとかノリが悪い人だとかは思わない。
そもそも「つまらない人生」「つまらない人」というのはどういったことを意味するのだろうか。
例えば何らかの付き合いがあり、一緒に飲みに行った時に自分が飲む側の場合は相手が飲まない人よりも飲む人の方がいいという人は多い。
確かに自分もお酒を飲む立場として一緒に誰かと酒を飲んでる時は楽しいことがある。
ただ「酒飲んでる人=面白い人」とも思わない。
結局面白いかどうかはあまり酒を飲む飲まないに関係がなく、むしろ酒が入ったことで言動が荒れて嫌な奴になる人も多いし、飲まなくても面白い人はいる。
現に自分の友人は飲まないタイプであり、自分は飲みながら向こうは飲んでないということがあるのだがそこでつまらない奴だなと思ったことは無い。
飲んだらもっと面白くなりそうだなとは思うけども飲まなくても十分面白いので特に気にしないようにしている。ここで「もっと楽しんでもらうために飲ませたい」と思うのは完全なるお節介で、向こうが楽しんでいるなら自分だけが飲んでいる状態でも問題ないだろう。
逆に酒が飲んで嫌な奴になる人はこれまでも見てきた。
もちろん飲んで楽しい人もいるので、結局一緒にいて楽しいかどうかは気が合うかどうかに尽きる。
おそらくつまらない人は酒を飲まないから面白くないわけではなく、飲んだところで魅力がない事には変わりないだろう。
「自分は飲んでるのに向こうが飲んでない状態」を嫌悪する心理には相手が楽しめてないのではないかという余計なお節介だけでなく、自分だけが飲んでいることの恥ずかしさや一体感の無さもあるのかもしれない。
本当の仲間なら同じように酔っている状態になりたいという心理はわかるし物足りないと思う事も分かるが、飲んでない状態でも十分楽しいという相手側の心理も理解する必要があるのかもしれない。
そして何より本当に面白い人はお酒を飲まなくても楽しいことが多い。
また酒を飲んでない人=つまらない人生を送ってる論も間違っているように思う。
「あんまり飲み会とかイベント行かない付き合い悪い生活してるんだな」というレッテル張りがここでも行われる。
むしろこれは逆になることもあって例えば酒を習慣的に常飲している人はつまらない人生を送っている。この最大の証拠が自分である。
つまらない人生や上手くいかない人生を紛らわすために酒に依存しているしたいてい家飲みで安酒を煽っている。誰もいない公園で虚ろな目をしながらワンカップ酒を飲むこともある。
逆に酒を飲んでいなくても楽しい人生を送っている人もいる。
お酒は一切やらないが健康で仲間と外出してワイワイしている人と、家で現実逃避のためにお酒を飲み二日酔いに悩まされる人とならば明らかに前者の方が充実している人生だ。
客観的に見て楽しい人生なのか、本人が楽しい人生なのかかどうかも問題であり例えば前述の友人は酒を飲まなくとも十分楽しんでいる。
酒やたばこをやらない分お金もありいろんなものを買っていてほとんどお金を飲食にしか使っていないエンゲル係数爆上げ状態の自分からすると確かに楽しそうである。
更に言えば酒は酔いが冷めた後は地獄でありこの時は最高につまらないし嫌な時間である。酔いが冷めて元の状態にまで戻る気分の悪い時間と戦わなければならないため、むしろ酒飲みはつまらない時間を過ごすことが多い。
更に客観的に楽しく充実した人生を送っているケースで言えば摂生をしているアスリートなどは充実した人生を送っている。たとえばサッカーポルトガル代表のクリスティアーノ・ロナウドは肉体管理を徹底し酒は一滴も飲まないが世界最高の選手に上り詰め世界一のリア充である。
一方既に肉体的にも衰えが見え始め、酒に依存しているウェイン・ルーニーは世界トップレベルのサッカー選手であり大金を稼いでいるのにどこか不幸せそうだ。
そしてまさにこのルーニーのようなケースが実は酒飲みの実態なのである。辛いことを紛らわすためやストレスを発散するために酒を飲んでおり充実していたら酒など頼る必要もないのである。
むしろアルコールを飲まずに済んでいる人は楽しいことが人生にいっぱいあるからわざわざ酒を飲まなくてもいいのであり、その部分は羨ましいし自分も酒を飲んでいない時期の方が楽しかったしまだマシだった。酒を飲まずにやっていられる人生ならそれはきっと幸せな人生だ。
お酒に頼る人は自分のように精神的な憂鬱を発散するために飲んでいる場合が多いため一概には明るく楽しい人間だと言えない。
お酒なしでも楽しそうな人と、酒に頼らなければ楽しくなれない上に酒が切れると機嫌が悪くなる人、果たしてどちらがつまらない人だろうか。
その一方で人生が上手くいかないから酒の量が増えるわけであり、それなりに楽しい人間はそこまで飲まないし付き合いの時だけ飲むことが多い。
習慣的に常飲している人はいわゆるアルコール依存であり、特に家で一人酒をしている人が「酒を飲まない人はつまらない奴だ」という程滑稽なことは無い。
もちろん人生が充実している上に上手なお酒の飲み方ができて本当に楽しい人もいるだろう。ようは人それぞれで人間そんな単純でもないというだけの話である、お酒が好きだがつまらない人間として自嘲気味にそう伝えたい。
酒を飲む人にもいろんな種類がいる。
外で誰かと飲む人はお金も持っていて交流関係にも恵まれている、こういう人は確かに楽しい人生を送っているだろう。週に2,3日誰かと外で飲むようなタイプは面白いし家に誰かを呼んで飲んでいるならば面白い人生だと言える。
人付き合いの一環やコミュニケーションツールの一つになっているならば酒は楽しいツールの一つだ。
ただここにたいていひとり酒を家で飲んでいる自分のような負け組の人間をカウントしてよいのかどうかは疑問だ。毎日のように一人家で酒を飲んでいるが間違いなく自分はつまらない人生を送っている。人生が上手くいっていないから最低限の楽しみを見つけようとしているのだ。
「酒を飲む人の人生は楽しい」と強がっている人程、実態は惨めな物なのである。
逆に酒を飲んでない人も全員が充実しているとは限らない。
酒を飲んでいる人が全員ルーニー系でもないし、酒を飲んでいない人が全員ロナウド系でもない。結局人間や人生というのは酒を飲んでいるか飲んでないかでは判断できないほど複雑な物でもある。
飲む生活にも様々な生活があり、飲まない生活にも様々な生活がある。そしてそれを考えずにレッテルを張る人間が増えている。そんな稚拙な議論に終止符が打たれることを願いたい。