負け組ゆとりの語り場

社会に取り残された男が日々を語る

「核兵器を持っていれば攻撃されない」という北朝鮮の論理

最近世間を騒がしている北朝鮮問題であり、本当に戦争が始まってしまうのではないかという事までささやかれている。アメリカ海軍の空母カール・ヴィンソンが朝鮮半島に派遣され臨戦態勢に突入していおり、ドナルド・トランプ金正恩を抹消したいとう旨の発言を来ない、アメリカ政府もこれまでの対北朝鮮政策が誤っていたと認めている。

 

北朝鮮政府「シリア問題を見て我々の自衛的政策の正しさが証明された」

 

そして結局のところこの騒動は和解にも似たような形で戦争は回避された。

この一連の流れは一見すると北朝鮮が敗北したかのように見えるが、実際の所むしろ戦争を回避できた北朝鮮の勝利とも考えることができる。仮に北朝鮮核兵器が存在しなければ今ごろイラクのようになっていたかもしれない。

 

今更説明することでもないがアメリカ合衆国というのはあらゆる地域に干渉し、「民主主義」という理想を押し付けていくことで有名な国だ。

ロシア大統領のウラジーミル・プーチン「アメリカは次から次へと介入し手術のように国を改造していく」と発言、世界中に「民主主義」という種を植え付けていくことが彼らの仕事であり、世界中の独裁者が目をつけられては葬られている。

古くはアドルフ・ヒトラーにまで遡り、最近ではミロシェビッチフセインカダフィなどが葬られた。そしてその次のターゲットはアサドと金正恩であろう。一時はイランのアフマディネジャドもターゲットになりかえ世論をイラン悪しという方向に向かわせていた。

アメリカのやり口はいつもこうだ、「あの国は悪いぞ」という雰囲気を作り上げることがとにかく上手い。メディアを使って世論を操作することがとにかく巧妙であり、世界の情報を支配しているのはアメリカである。

学校のクラスに例えれば発言力の強いジャイアンであり、「アイツは悪いことをしている、とっちめろ」という雰囲気を醸成していく存在でもある。

自分たちは世界に対して独裁を行っているにもかかわらず、海外の独裁者を目の敵にするのがアメリカのいつものパターンである。

巧妙に追い詰め、世界の世論が何となくその国が悪いという雰囲気になってきたときに攻撃する。できれば先制攻撃をされた方が望ましい、なぜなら正々堂々と攻撃できるからだというのが彼らのやり口である。ベトナムトンキン湾事件のように実際に事件を捏造したことがありアメリカのお得意な方法でもある。

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それゆえに今回の事で北朝鮮が強硬にミサイルや核兵器を製造することはある種理にかなった行動だともいえる。北朝鮮政府というのはカダフィフセインの事例を間違いなく知っており、「東アジアのイラク」になってしまうことを危惧している。

彼ら、すなわちアメリカというの独裁国家の存在に我慢がならない国でもある、そして常に戦争をやっていなければ軍事経済が回らない国でもある。作った兵器は使用しなければ次の兵器が作れないのだ。見つけたらすぐさま介入し独裁から民衆を「解放」することを大義名分として軍事介入を行う。

いつもやり方は一緒であり、このパターンの繰り返しである。腕慣らしで手軽に殴れるサンドバックを探しているジャイアンである。中国やロシアには正面から喧嘩を売らないのに、悪い弱小国を見つけ出しては介入する。そしてその理由づけは非常に巧妙であり「今回はアメリカが正しい」という雰囲気を作り出してから始める。なんだかんだでこの問題北朝鮮が悪いという雰囲気にやはりなっていたのは事実だ。

 

そんなか北朝鮮は今核兵器ICBMという究極の防衛手段を構築しつつある。イランやシリア、セルビアのようにならないために核兵器を持っている。現に北朝鮮はこれまでアメリカから爆撃されたことはなく、38度線の小競り合い程度で済んでいる。

北朝鮮は国家の存続という事を考えたときにある意味では成功しているともいえる。保有国にはさすがに手を出さない、そのことを彼らは熟知しているために綺麗ごとを捨て去り核兵器と弾道ミサイル一点張りで開発をしている。

ある意味で究極にコスパがよく、弱小国でも大国に対抗できる手っ取り早い手段をミサイル力全振りで実行している

戦争になれば周辺の同盟国を巻き込む可能性や、中国に参入という可能性も存在する為北朝鮮はこれまでアメリカの攻撃にさらされることなく続いている。今の時代に北朝鮮のような旧式の社会主義独裁国家が存続していることは非常に珍しいケースだ。

社会主義国がほとんど滅んでしまった今の時代に国家の存続という意味ではその原形を保っている。強硬な手段であり万国に認められる手段ではないが存続には成功している。

これまで稚拙な国家と批判されてきた北朝鮮も、これだけ独裁国家が滅ぼされたり介入されてきた歴史を考えるとその政策には一定の効果があったともいえる。

 

もちろん拉致問題朝鮮総連問題のこともあり、100%素晴らしい国家とは言い切れず日本としても実害を受けている。しかし北朝鮮が東アジア地域の緩衝地帯になっているというメリットは存在する。

ミサイル防衛、核保有故国、大国の緩衝地帯という独特なポジションを見つけ自分たちは独裁政権を維持できているという構造がある。

北朝鮮がなくなったら夢の理想世界が広がっているかと言えばそうではないだろう。またそういった独裁国家が悪であり滅ぶべきという考え方もアメリカ主導のイデオロギーである。

21世紀にそういう国があってもいいんじゃないかなという考え方にも一理あるだろうし、北朝鮮生存戦略というのは世界中の独裁国家が滅ぼされている現実を踏まえたときに成功していると考えることもできる。

 

仮にイラク核兵器ICBMを持っていたら攻撃されなかったであろうし、持っていると疑いをもたれているイランはこれまで何度も攻撃の危険性があったにもかかわらず最終的には攻撃を去れなかった。先進国と同等の軍備をそろえられない国にとっては核兵器というのは非常にコストパフォーマンスの高い防衛手段ともいえる。

核兵器=攻撃のための手段」というイメージが強いが、現実には防衛のための手段として機能しており世界の大規模な戦争を抑止してもいる。

 

北朝鮮としても本気でアメリカ本土を攻撃するために核兵器保有しているわけではない。「自分たちに手を出したら攻撃するぞ」という手段として核兵器を持っている側面はもう少し報道されてよいかもしれない。

とにかく彼らは東アジアにおけるイラクになることを恐れている。またイラク戦争のような戦争が東アジア地域で起きない方が周辺国にとってもありがたい。東アジアは世界と比較すれば非常に安定した地域でもある。

しかしその一方で世界の大国が対峙する場所でもありいつ正面衝突が誘発されるかはわからない。その意味で緩衝地帯としての北朝鮮の意味は大きく、単に悪者とだけ報道する事は地政学の知識を欠いていると言わざるを得ない。

間違いなく日本にとって実害を与えてくる国であるが、その国も実は存続させた方がメリットがあるといインテリジェンスのある考え方も必要なのではないか。イギリスが二枚舌外交と言われるがそう言った二面性も外交の舞台では重要である。表面では敵視しながらもあの国があったほうが実は得であるという裏の考え方も必要になってくる。

北朝鮮が悪い国であることは明白だが、その悪い国さえも利用するという裏を読んだ考え方も求められる。